『ジークアクス』第9話で突如として姿を現したララァ・スン。
その名が語られるだけで、ガンダムファンにとっては胸がざわつく。――「あのララァが、なぜ今、ここに?」
白いモビルスーツに散った彼女が、再び物語に呼び戻された理由。新しい声で、別の場所で、それでも“ララァ”である彼女は、何を語りかけようとしているのか。
これは、ひとつの時代に終止符を打ち、そして新たな物語へと橋をかける「再会」の物語だ。
ララァ・スンはなぜ『ジークアクス』に登場したのか
過去作とのつながり──宇宙世紀からの“引用”
『機動戦士ガンダム』において、ララァ・スンはニュータイプの象徴であり、シャア・アズナブルとアムロ・レイという“宿命のライバル”の間に立つ存在だった。
彼女の死は、ふたりの心に深い傷を残し、以後のシリーズにも影を落とし続ける。
そんな彼女が、『ジークアクス』というまったく異なる時間軸の作品に登場するという事実は、単なるファンサービスではなく、宇宙世紀を再解釈する挑戦とも言える。
『ジークアクス』第9話での登場シーンと役割
第9話「シャロンの薔薇」では、娼館「カバスの館」にて“夢見の力”を持つ女としてララァが登場。
彼女は主人公マチュに「あなたが本当に恐れているものを見せてあげる」と語りかけ、マルチバース(多元宇宙)の視点を提示する。
「私の本当の人生は、白いモビルスーツに撃たれて終わった」というセリフは、宇宙世紀のララァの記憶を引き継いでいるかのようであり、視聴者に“彼女は一体何者なのか?”という謎を投げかける。
羊宮妃那が演じる新たなララァ像とは
声の演技が描き出す「別の世界のララァ」
ララァ・スンを演じるのは、今注目の声優羊宮妃那(ようみや ひな)さん。
彼女の声は、柔らかく、どこか“この世のものではない”響きを持ち、夢と現実の境界を曖昧にする。
特に印象的なのが、ララァの「私の本当の人生は……白いモビルスーツに撃たれて終わったの」という一言。
淡々としていながらも深い悲しみを湛えたその声は、視聴者の心を強く揺さぶる。
キャラクターとしての再解釈とそのインパクト
今回のララァは、過去の記憶を持つ“可能性の亡霊”のような存在として描かれている。
彼女が語る未来は、シャアが赤いモビルスーツに乗り、連邦軍と戦う「もしも」の世界。
それは視聴者が知っている宇宙世紀の歴史でありながら、この物語では選ばれなかった道でもある。
ひとつの魂が複数の時間軸を渡るという壮大なSF的設定が、ララァというキャラクターに“神話性”を与えている。
ララァ登場が『ジークアクス』に与える意味
シャロンの薔薇とモビルアーマーの意味
ララァの登場と同時に姿を現したのが、未建造のはずのモビルアーマー「シャロンの薔薇」。
これは明らかに、かつてララァが搭乗していたエルメスを彷彿とさせる存在。
だが本作では、「まだ造られていない」兵器として扱われ、時間軸のねじれや記憶と予知の融合といったテーマが浮かび上がる。
まるで“未来から来た亡霊”のようにララァが語ることすべてが、過去と未来を撹乱するトリガーとなっている。
『ジークアクス』が示唆する「もう一つのガンダム像」
『ジークアクス』は、過去シリーズの“続編”ではなく、“再構築”としての顔を持っている。
そこにララァを登場させたことは、ガンダムという神話の再編集を意図していると言える。
視聴者の中に眠る“ガンダム像”をあえて揺るがせ、「あなたが見たかったのは、これですか?」と問いかけてくるようだ。
そしてその問いに答えるのは、シャアでもアムロでもなく、“今を生きる私たち”なのかもしれない。
まとめ:ララァの登場が示す“選ばなかった未来”
『ジークアクス』におけるララァ・スンの登場は、単なる懐古ではなく、ガンダムという神話世界への再接続でした。
彼女はシャアでもアムロでもなく、「選ばなかった未来」を語る存在として現れます。
それは、視聴者それぞれの中にある「もうひとつの可能性」への問いかけ。
そしてその声をどう受け取るかは、この物語を“今”観ている私たち自身に委ねられているのです。
ララァが見せた夢は、どこかで本当にあったかもしれない未来。その儚さと美しさが、今、画面越しに響いてきます。



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