エミリアがレグルス・コルニアスに「79番目の妻」として狙われた理由は、ただの数字ではありません。
レグルスの価値観、フォルトナとの因果、そしてエミリア自身の物語が、静かに重なり合っています。
◆ 1. まず結論:エミリアが「79番目」に選ばれた理由
エミリアが標的となった背景には、いくつかの要素が絡み合っています。
- レグルスの「妻=所有物」という歪んだ愛のかたち
- フォルトナが“かつての候補”だったという因縁
- エミリアの純粋さや精神的未成熟を、レグルスが“理想”と見なしたこと
79という数字そのものに特別な意味があるわけではありません。しかし、この数字には彼の価値観と過去が反映されています。
◆ 2. レグルスという存在の中心にあるもの
・「所有こそが愛」というゆがみ
レグルスは、愛を“相手を従わせることで完成するもの”と考えています。
妻は人格を尊重する対象ではなく、自分の理想に沿わせる存在。
そのため、妻たちを番号で呼ぶことも、彼の価値観では自然な行動でした。
・歪みはフォルトナの拒絶から始まったわけではない
過去編からもわかるように、レグルスの歪みはフォルトナに拒絶されたことから生まれたものではありません。
幼少期からの自己中心的な認知、他者への無理解、そして魔女因子の影響によって、彼の価値観は早い段階で固まっていました。
フォルトナの拒絶は「原因」ではなく、レグルスの価値観をさらに押し固めてしまった“きっかけ”に過ぎません。
◆ 3. フォルトナと“79番目”の因果
・フォルトナは「79番目の候補」だった
レグルスはエミリアに「79番目になりそこねた女性がいた」と語ります。
その女性こそフォルトナでした。
しかし彼女は、レグルスの“所有としての愛”を受け入れず、従うことを拒みました。
・フォルトナが妻にならなかった理由
フォルトナは、彼の価値観を拒絶した数少ない存在です。
レグルスは「自分の理屈に従わないもの」を排除するため、彼女を妻として扱うのをやめました。
・エミリアはフォルトナの“代替”ではない
よくある解釈に「エミリアはフォルトナの代わりだった」というものがありますが、
物語全体から見ると、それは少し違います。
エミリアが狙われたのは、フォルトナの拒絶が理由ではなく、
レグルスの価値観における“理想の所有物像”に近かったから。
純粋で、従いやすそうで、精神的に未成熟な少女──
レグルスにとって扱いやすい「完成形」でした。
◆ レグルスの“妻たち”について(補足)
レグルスには、エミリア以前にも多くの妻がいました。
総勢291人。そのうち238人はすでに亡くなり、残っているのは53人だけです。
その人数が示すように、彼が女性を“番号”で扱うのは、特別ではなく日常の価値観でした。
関係性は夫婦というより、
“レグルスが所有する存在”という方が近いものです。
妻たちは自由がなく、逆らうことも許されませんでした。
エミリアが“79番目”と呼ばれたのも、レグルス特有の「枠に当てはめる」価値観の延長です。
レグルスが討たれた後、妻たちはようやく束縛から解放されます。
物語では深く描かれていませんが、「支配の鎖」が断ち切られたことだけは確かです。
◆ 4. エミリアとレグルスの対比が描くテーマ
・所有 vs. 自由
レグルス:従わせることで愛を完成させる
エミリア:互いを尊重し合うことで関係は成り立つ
この対比は、物語で繰り返し描かれる大きなテーマのひとつです。
・フォルトナの意志とエミリアの答え
フォルトナは“拒絶”を選びました。
エミリアは“否定し、戦う”ことを選びました。
フォルトナが守ろうとしたものを、エミリアは自分の意思で選び取ります。
そこに、二人のつながりが静かに浮かび上がります。
◆ 5. 「79」という数字に隠された象徴性
79という数字に特別な意味は明示されていません。
しかし、番号で妻を扱うこと自体が、レグルスの認知を端的に表しています。
「女性を人格ではなく、所有物の枠にはめて数える」
その歪みこそが“79番目”の本質です。
◆ 6. エミリアが選ばれた本当の理由
整理すると、エミリアが選ばれた理由は次の通りです。
- 純粋さや精神的な未成熟をレグルスが理想と見なした
- 魔女因子との縁が濃い血筋だった
- 他者を思いやる性質が、支配の対象として扱いやすかった
- フォルトナとの因縁が“番号”としての79に繋がった
◆ 7. 戦いが意味したもの──エミリアの成長
レグルス戦は、エミリアの大きな転換点です。
彼の支配を拒み、“自ら選ぶ”側へと変わっていく瞬間が描かれています。
フォルトナの意志を受け継ぎながら、その先へ進む力。
氷の中で眠っていた少女は、過去を知り、束縛を拒み、
“自分の未来を自分で選ぶ存在”へと成長していきました。
◆ 8. まとめ
- 79番目は、フォルトナとの因縁とレグルスの価値観が重なった結果の数字
- レグルスの歪みは生来の価値観によるもので、フォルトナの拒絶は起点ではない
- エミリアは“所有の理想像”として選ばれたが、自らその価値観を否定した
- レグルス戦は、エミリアが「守られる存在」から「選ぶ存在」へと変わる転機だった
エミリアとレグルスの因果は、物語の奥に静かに流れるテーマです。
その背景を知ることで、エミリアというキャラクターの輪郭は、よりはっきりと浮かび上がってくるはずです。



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